疲労がたまったとき、こんなこと言う人いませんか?
- 「乳酸たまったー」
- 「乳酸のせいで走れなくなったー」
- 「乳酸たまって疲れたー」
こんな人に向けて衝撃の真実を明かします。
乳酸=疲労物質は嘘です!
本記事では、乳酸が単なる疲労物質ではない理由、乳酸作業性閾値(LT値)、乳酸の性質を利用した走り方を解説していきます。
ぜひ、参考にしてください!
乳酸=疲労物質は嘘
乳酸=疲労物質は嘘です。
ここでは、なぜ乳酸=疲労物質という誤解が生じたのか、また乳酸の真実について解説します。
乳酸=疲労物質という誤解が生じた理由
乳酸は長い間、疲労物質として世に知られてきました。
このような誤解が生じたのは、ある研究者の実験によってです。
1929年、ヒルという世界的に有名な研究者が、カエルを用いたこのような実験を行いました。
カエルの筋肉を摘出し、「普通の筋肉」と「乳酸につけた筋肉」の2通りで、筋収縮の違いを比較しました。
すると、乳酸につけた筋肉の方が筋収縮が弱かったのです。
筋収縮が弱まったのは、乳酸による疲労が原因と考えられたため、
乳酸=疲労物質
という考えが世に広まっていきました。
しかし、ここで乳酸と疲労の関係について、1つ疑問が生じました。
乳酸は、糖がエネルギー源として使われることで発生する物質です。
したがって、糖が無ければ乳酸は発生しないということになります。
しかし、マラソン完走直後などは、体の糖がほとんどない状態であるのにも関わらず、大きな疲労を感じます。
乳酸が発生しづらい状況で疲労を感じるというのは、何かおかしいですよね?
そこで、乳酸を単なる疲労物質と片付けるのはどうなのかという疑問が生じました。
乳酸はため過ぎなければエネルギー源になる
ここで、乳酸についての真実をご紹介しましょう。
ヒルの実験には、一つ大きな欠陥がありました。
それは、カエルの筋肉の温度を実際の体温よりも低い状況下で行なっていたことです。
そこで、実際のカエルの体温と同じ状況下で行ったところ、普通の筋肉と乳酸につけた筋肉とで、筋収縮に大きな違いは見られないことが判明しました。
さらに、乳酸は生成されても、徐々にエネルギーとして再利用されることも分かりました。(最終的には、水と二酸化炭素に分解。)
要するに、乳酸は単なる疲労物質ではなかったのです!
しかし、乳酸をため過ぎてしまうと疲労を感じるという概念は変わらないという点には注意です。
ため過ぎなければ、乳酸は再びエネルギー源に戻り、疲労の直接的な要因とはならないということです!
ランナーの重要な要素である乳酸性作業閾値(LT値)について
あなたは、「LT値」という言葉を見たり聞いたりしたことはありませんか?
LT値とは別名、乳酸性作業閾値とも言い、乳酸に関係する言葉なのです。
そんな乳酸性作業閾値について、詳しく解説していきます。
乳酸性閾値(LT値)とは
乳酸性作業閾値とは、簡単に言いますと、乳酸が急激にたまり始めるポイントのことです。
走るペースが遅ければ
乳酸の蓄積速度<乳酸がエネルギーに戻る速度
となるので、乳酸の急激に上昇することはありません。
しかし、走るペースが速くなれば、
乳酸の蓄積速度>乳酸がエネルギーに戻る速度
となるので乳酸が急激に蓄積し、疲労の原因となります。
乳酸性作業閾値は、別名LT値とも言い、こちらの呼び方の方がよく使われます。
ランナーなら知ってて損しない用語ですので、これを機に覚えましょう!
乳酸性作業閾値を知る方法
乳酸性作業閾値を知る方法は、以下の3つです。
- 専門機関で測る
- 心拍数から求める
- ダニエルズ式ランニング用計算ツールを用いる
1の専門機関で測るについて、血中乳酸濃度をランニング直後の血液を採取することで測定します。
その後、乳酸性作業閾値を割り出すという方法です。
かなり専門的なので、正確な値を求めることができます。
しかし、なかなかそういう機関が周りになかったり、お金がかかるのが難点です。
2、3については、少し精度は落ちますが、個人でも求められる簡単な方法です。
2の心拍数から求めるについて、心拍数から乳酸性閾値を求める方法です。
求める式は、
(最大心拍数-年齢-安静時心拍数)×0.75+安静時心拍数
です。
最大心拍数は、だいたい220-(年齢)という式で求められます。
もしくは、2分間のきつい坂道走を何本か繰り返すことでも求められます。
1本坂を上りきったところで、心拍数を図ります。
2本目も同様に心拍数を測り、1本目より高ければ3本目を走り、さらに高くなるか確認します。
もし、2本目の心拍数より3本目の心拍数が低くなれば、2本目の心拍数が最大心拍数となります。
安静時心拍数は、起床後すぐの安静な状態で測った心拍数のことです。
これら2つの心拍数を求め、先程の式に当てはめて計算すると、乳酸性閾値の際の心拍数が求められます。
3のダニエルズ式ランニング用計算ツールについて、数々のオリンピックメダリストを育てられた、ダニエルズさんの理論に基づいた最適なランニングペース表のことです。
こちらからアクセスできます。
距離と自己ベストを入力し、「calculate 」ボタンを押すだけで、ジョグやインターバル、閾値走などの最適ペースを割り出してくれる大変便利なツールです。
様々なペースが表示されますが、乳酸性作業閾値のペースは、「Tペース」に一番近いです。
このTペースは、後ほど解説しますが、閾値走を行う際のペースですので、実際の乳酸性作業閾値はもう少し速くなります。
このように、様々な方法で乳酸性作業閾値を求めることができます。
乳酸性作業閾値を高める閾値走のやり方
乳酸性作業閾値を高めるトレーニングとして、代表的なのが閾値走です。
このペース走ですが、大事なポイントが1つあります。
それは、「乳酸性作業閾値より少し下のポイントで行う」ということです。
乳酸性作業閾値を上回れば、すぐに疲れて走れなくなってしまいます。
乳酸性作業閾値より少し下のポイントで走ることで、乳酸の過剰な蓄積に対する耐性をつけることができる上に、乳酸を再びエネルギーに変えるスピードも上がります。
閾値走のやり方を分かりやすく解説しますと、
- 自分の乳酸性作業閾値を求める。
- ペースを乳酸性作業閾値よりも少し下のポイント(心拍数ならマイナス5〜10回、ペースならプラス5〜10秒)に設定する。ダニエルズ式ランニング用計算ツールの場合は、Tペースで走る。
- 距離は、初めは3kmほどに設定する。慣れてきたら距離を伸ばしても良い。
- 閾値走を何回か行っていくうちに、乳酸性作業閾値も高まるので、また1〜3の繰り返しを行う。
という感じです。
特に長い距離においては、非常に有効な練習となりますので、ぜひチャレンジしてみてください!
乳酸を溜め過ぎず、エネルギーに変えるランニング中の工夫4つ
乳酸は、溜め過ぎると疲労の原因となってしまいますが、上手く利用すればエネルギーに変えられることが分かりました。
ここでは、乳酸を溜め過ぎず、エネルギーに変えるランニング中の工夫を4つ紹介したいと思います。
工夫1. オーバーペースに注意する
1つ目は、オーバーペースに注意することです。
オーバーペースは血中乳酸濃度を急激に上昇させ、疲労の原因となるからです。
特に、乳酸性作業閾値を超えたオーバーペースは、乳酸を一気にため過ぎてしまうため、厳禁です。
オーバーペースではないペースの目安ですが、乳酸作業性閾値を越えない程度のペースです。
これにより、
乳酸の蓄積速度<乳酸がエネルギーに戻る速度
となるので、最後まで一定のペースで走ることができます。
ただし、乳酸性作業閾値を超えた心拍数やペースでも、短時間であれば走ることはできます。
したがって、800mや1500mなどの距離の短いレースであれば、乳酸性作業閾値より速いペースで走っても急激にペースダウンをすることは少ないです。
したがって、距離の短いレースでは乳酸性作業閾値より速いペースで走るのが一般的です。
ただし、いくら距離が短いといっても全力で走ればペースダウンしますので注意しましょう。
工夫2. 急激なペースアップをしない
2つ目は、急激なペースアップをしないことです。
急激なペースアップは、乳酸性作業閾値を超える可能性が高いからです。
レース中に無駄に急激なペースアップを繰り返すと疲れてしまいます。
ですが、ラストスパートとなると話は別です。
自己記録を更新したり、ライバルに勝つためにも、ラストスパートは出せるのであれば、出し切りましょう。
工夫3. 苦しくなったら一旦ペースを落とす
3つ目は、苦しくなったら一旦ペースを落とすことです。
ペースを落とすことで、
乳酸の蓄積速度>乳酸がエネルギーに戻る速度
だったのが
乳酸の蓄積速度<乳酸がエネルギーに戻る速度
に変化することが期待されるからです。
その結果、疲労が回復して、エネルギーも溜まることで、再びペースを上げることができます。
疲労が回復してペースを上げるときの注意点ですが、一気に上げ過ぎないでください。
自身の疲労度と対話しながら、無理のない範囲でペースアップしましょう。
工夫4. BCAAを含んだ飲料を摂取する
3つ目は、BCAAを含んだ飲料を接種してみてください。
運動前や運動中にBCAAを摂取することで、乳酸の蓄積を抑える効果が認められているからです。
BCAAとは、必須アミノ酸の一種であるバリン、ロイシン、イソロイシンの総称のことです。
スポーツドリンクには、ほとんどの商品にBCAAが含まれています。
したがって、マラソンの給水では水ではなく、スポーツドリンクをとることで、乳酸の蓄積を抑えることができます。
以上、乳酸の真実について解説しました。
乳酸=疲労物質という嘘が生じてしまったのは、カエルを用いた不十分な実験を、たくさんの人が鵜呑みにしてしまったことが原因でした。
今では、「乳酸はため過ぎなければ、エネルギー源になる」というのが正しい理解です。
乳酸を悪者扱いにするのではなく、上手く利用してあげることが大切だったのです。
このように、ランニングについて正しい知識を持つことは、非常に大切です。
間違った知識は、ケガや伸び悩みに繋がったりするからです。
この記事を読み、乳酸について正しく理解し、日々の練習や大会に生かして頂ければ幸いです。
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