あなたは、短距離走は無酸素運動、長距離走は有酸素運動だと思っていませんか?
体育の授業とかで習った人もいるでしょう。
しかし、はっきり言います。短距離走は無酸素運動ではありません。
本記事では、この理由を解説します。
ぜひ、参考にしてください!
短距離走が無酸素運動ではない理由
短距離走が無酸素運動ではない理由を解説します。
1.そもそも酸素を使わずに運動は無理
まず、考えてみてください。
酸素を使わずに運動ってできますか?
試しに息を止めて運動してみてください。(くれぐれも無理しない程度に)
とてもきつくて運動どころではありませんよね?
水泳選手も息継ぎをしながら泳ぐように、酸素を使わずに運動というのは不可能なのです。
無酸素運動は酸素がないかのような響きに聞こえますが、実際にそのような運動はありません。
しかし、誤解を招きそうなので、一応念押ししておきます。
確かに、酸素を必要とせずにエネルギーを生み出す過程は存在します。
1つが、解糖系と呼ばれる過程です。
解糖系は、体内のグリコーゲンを分解することでエネルギーを産生します。
もう1つが、ATP-CP系と呼ばれる過程です。
ATP-CP系は、体内のクレアチンリン酸を分解することでエネルギーを産生します。
これらの過程は、エネルギー産生の際に酸素を必要としません。
また、これらの過程を無酸素性エネルギー代謝と呼ぶことがありますが、運動が無酸素性エネルギー代謝だけで構成されることはありません。
酸素を使ってエネルギーを得るTCA回路・電子伝達系と呼ばれる過程も存在します。
この過程は、細胞の呼吸の役割をするミトコンドリアがエネルギーを産生します。
この過程は、無酸素性エネルギー代謝に対して、有酸素性エネルギー代謝と呼ばれます。
短距離走のような短時間で激しい運動でも、有酸素性エネルギー代謝が働いています。
どのくらいの割合で働いているのかは、以下に具体例をあげて説明します。
2.短距離でも有酸素系のエネルギーが50%使われる
では、短距離走ではどのくらいの割合で有酸素系のエネルギーが使われているのでしょうか?
ここでは、短距離走の1種である400m走を例にあげてみます。
400mは人間が全力で走ることのできる最大の距離ということで有名ですよね。
Spencer and Gastin (2001)によると、運動中の酸素摂取量を計測し、運動時のエネルギー産生を調べたところ、400m走中の全体のエネルギー産生量の43%は酸素を使ったエネルギー産生であることを示していました。
この実験では、肺での酸素取り込みのみを見ていて、運動前から血中や筋中に存在する酸素量は反映されていません。
その量も見積もれば、400m走中のエネルギー需要量の50%程度は酸素を使ったエネルギー産生であると考えられます。
どうでしょう。
俗に無酸素運動と呼ばれる短距離走でもエネルギー産生の半分を有酸素系のエネルギーが担っているんです。
酸素を使ってエネルギーを産生する割合が半分もあるのに、それをあたかも酸素を使わないと誤解を招く「無酸素運動」と表現するのはどうなんでしょうか?
私は、言葉の使い方を変えるべきだと思います。
結論:無酸素運動という言葉を使うのは控えましょう。
この記事の結論です。
無酸素運動という言葉は、あたかも「酸素を使っていない運動」だという誤解を招いてしまうので、この言葉を使うことは控えましょう。
知識がある人からすれば、「その表現はちょっと…」となります。
「だったらどんな言葉を使えばいいの?」と疑問に思う人もいると思います。
走る競技の場合は、「短距離走」で云いとおもいます。
しかし、他の競技で全力運動の場合は、「高強度運動」という言葉を使うのがよいかと思われます。
全力運動が高強度の運動であるということは、紛れもない事実ですので、これだと誰も誤解を生みません。
逆に、ジョギングなどの強度の低い運動は「低強度運動」と呼ぶ感じです。
これは、専門用語だけに言えることではないと思いますが、言葉は選び方次第で誤解を招いてしまうことがあります。
その誤解を防ぐためにも、誤解を招くことが少ない言葉を用いることは大切です。
今日から無酸素運動という言葉は使わず、代わりに高強度運動という言葉を使ってみるのはどうでしょうか?
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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